むち打ち症について

むち打ち(鞭打ち)ってなに?

衝突事故で起こるケースが多い
【クルマの衝突事故でよく起こりやすい症状】
車社会といわれていますが、特に都会や人口密集地などでは交通渋滞がよく問題となっています。そういった車社会の影には交通事故の発生率も年々増加の一方を辿っているのが現状です。その交通事故の中でも特に多いのが衝突事故です。俗にいうオカマ堀と呼ばれる後方からの追突の際に、一番起こりやすい外傷がむち打ちになります。
交通事故のほとんどはむち打ち症を発症されるといわれています。むち打ち症は別名「外傷性頸部症候群」とも呼ばれています。間接的な衝撃を首部にもらった際に、まるでムチのようにしなる動きにより起こる症状をまとめた呼び方です。


首の骨は頸椎と呼ばれていますが、そこに強度の衝撃が加わると、人体は骨折を防ぐために椎間板や軟骨や筋肉などで衝撃のパワーを吸収、分散します。そのために、こういった組織が損傷し、首や肩に激しい痛みが現れるのです。
衝撃が大きくなればなるほど、頸部の血管や神経にまで悪くなる場合もあります。この頸部の神経は首から背中にかけて全身へと枝分かれするため、首だけではなく体のいろいろな部分にまで影響を及ぼす可能性があります。

交通事故の増加とむち打ち症の症例数は正比例しているといわれています。しかしながら実際のところは研究も進んでおらず、むち打ち症といった言葉の定義も使用範囲も決められておらず、詳しいメカニズムも解明されていないといわれています。

むち打ちの種類と症状

受傷の翌日から首や肩が痛みだす 【受けた次の日から痛みが走る】
衝撃を受けた直後はそんなに自覚症状がない方も多く、あったとしても軽度のことが多いため大したことはないと自己診断してしまうこともあるのがむち打ち症の大きな特徴です。実際は次の日ぐらいから徐々に痛みが現れる場合が多いです。人によっては1週間後に発症する方もいます。このケースの多くは、頸部局所症状になり首の後ろに痛みやコリを感じます。その他、熱を持ったり、背中や肩が痛くなったり、頭痛、胸の痛み、だるさ、耳鳴り、意識障害、目がかすむ、難聴、腰痛などさまざまな症状がみられる場合があり、これらの症状が複数重なることがあります。

その発症する症状は大きく分けて以下の4パターンに分けられます。

バレ・リュウー症状型

バレ・リュウー症状型とは別名、後部交感神経症候群とも呼ばれます。血液の流れをつかさどる交感神経が損傷することで、椎間板の圧力を受け椎骨動脈の血液の流れが低下することで症状が出るとされています。
首の後ろや後頭部の痛みから、めまい・耳鳴り・目のかすみ・耳の難聴・などが起こることがあります。

根症状型

頸椎の間が狭くなってしまい、神経に圧力が加わり発症します。首の痛みはもちろん、腕の痛み・しびれ・重みを感じる・後頭部の痛みなどが現れますが、これらはくしゃみや咳でもっと強まります。また首を回したり曲げたりすることでどんどん悪化してしまうといわれています。

頚椎捻挫型

このタイプが一番多く、一般的なのですが、衝撃を受けた際に椎骨に外からの力が加わることで、靭帯が引き伸びたり、傷がつき捻挫のような状態が引き起った状態になります。むち打ち症の70%はこの症状と言われています。首や肩の動きは制限され、少しの動きでも痛みは強くなります。

脊髄症状型

脊髄(頚椎の脊柱管を通る場所)が傷つき、強い圧力を受けたケースがこれにあたります。下に伸びた神経が損傷され、下肢に知覚異常が発生し、歩行障害なども現れるようになることがあります。さらに、膀胱直腸障害により尿や便が出にくくなるケースもあります。

むち打ち症にはなぜなるの?

首の過伸展・過屈曲で筋肉が損傷 【首部の過剰な伸び縮みにより筋肉に傷がつく】
頭部に何か重たい物が落下した際の衝撃でむち打ち症が発症することがあります。最大の原因と言われているのはやはり交通事故です。特に止まっているところに後ろから追突されると、クルマ全体が前方へと飛び出しますが、その際全身も前方に行く力が働きますが頭部だけは重たくシートと密着しているわけではありませんので当然置いて行かれます。
その結果、首部分にずれが生じその力が大きい程筋肉の前後に伸びたり縮んだりする動きも大きくなります。この過剰な動きが激しい痛みを起こしむち打ち症となるといわれています。

では、なぜ首がこのような動きになるのかというと、首というのは椎骨と呼ばれている7つの骨が重なってできているからです。1つ1つの間によく聞く椎間板という軟骨が上の骨と下の骨をつなぎ合わせています。その軟骨があることで骨同士が当たらないようになっています。いわばクッションの役割を果たしています。
その椎骨の中には脊柱管という名前の管が走っており、脳から下に進む神経の束が通っています。そこから枝分かれした末梢神経は骨同士の間にある椎間孔という穴を通り、骨や腕に伸び、そのエリアの運動感覚を作用します。

筋肉というのは、筋線維の集約で作られています。この筋肉は強い力で首が急に引っ張られたりする際に、傷つき、最終的は内出血を起こします。特に、胸鎖乳突筋と呼ばれる鎖骨のあたりを通る部分が損傷する場合が多くあります。

重度の症状になってしまうと、椎骨のずれにより神経圧迫となるケースもあります。この場合は頸椎損傷となり、むち打ちとはすこし違った呼び方をされます。
椎間板が裂けると、中にある髄核といものが外に出ますがその際に後ろを走る神経に圧が加わる状態を椎間板ヘルニアと呼びますが、この椎間板ヘルニアはむち打ち症が原因で起こることもあるといわれています。

むち打ち症の検査と診断

本人の訴えが診断のポイントに “本人の訴えが診断のポイントに”
まず、受傷した日時や状況、痛みの出ている部位や痛みの程度、ほかに現れている症状などに ついて質問されます。
問診に続いて触診が行われ、首を回したり、曲げたり、伸ばしたりしたときや、頭を上から押さえられた ときに痛みが強まったり、胸に痛みが広がるかどうかを調べます。
神経の障害を知るために、神経テストも行われます。腕や指の曲げ伸ばしがスムーズに行えるか、 腕に触れられたときに知覚異常が生じるか、といった点が観察され、ハンマーで手首や肘をたたいた ときの反射の現れ方なども調べます。
骨折の有無や骨のずれを確認するためにX線撮影検査も行われますが、頚椎捻挫型では 異常がみられません。そこで本人の訴えから重傷度を判定します。

受傷から1~2日後に首に軽い運動障害などが現れた場合には軽症、受傷の直後から、首がほとんど 動かせないくらいに激しく痛み、日常生活に支障をきたしている場合には重症と診断されます。
また、軽症と重症の中間程度であれば、中等症に分類されます。
首の神経が損傷されている可能性がある場合には、CT検査やMRI検査が行われ、ときには入院後に 脊髄造影検査や椎間板造影検査が行われます。これらは、局所麻酔をして脊髄に造影剤を注入し、 X線撮影を行う検査です。動きに伴う頚椎の、より詳しい情報が得られる点が特徴です。
検査時間は15分程度ですが、造影剤の副作用を防ぐために、半日ほど安静にしている必要があります。

むち打ち症の予防

事故に遭ったら無症状でも診断をしましょう “事故に遭ったら無症状でも診断をしましょう”
むち打ち症は不意の事故によって起こる為、予防は困難ですが、自動車事故に遭ったり、スポーツ中に頭を強く打ったような場合には、できるだけ早く受診するようにしましょう。
事故の時点で外傷や自覚症状はなくても、しばらくしてからさまざまな症状が現れることもあります。
放置すれば回復が遅れ、日常生活に支障をきたすことにもなりかねません。
また、頭を打った場合には、脳の血管に障害が起こっている可能性もあります。からだへの衝撃を 軽視しないようにしましょう。
“乗車時にはシートベルトを正しく装着しましょう”
自動車事故の発生件数は年々増加しています。むち打ち症は、いつ、誰に起こっても不思議では ありません。
むち打ち症は、シートベルトを正しく装着したうえで、ヘッドレストの中央に後頭部が収まるよう、 高さを調節するように気を配れば、ある程度までは防ぐことができます。
乗車時の習慣にするように心がけてください。